市場のグループで輸出に取り組んだ事例
海外への営業ツールとなるグループ独自の商品リストや契約書を作成
-
参加企業
-
主要ターゲット国
Q 参加企業の概要と、活動の主な内容をお聞かせください。
我々のグループは芝浦の食肉、大田の青果、豊洲の水産・青果などからなるグループです。私たちの取組の成果として、商品リストや契約書、ロゴマークがあります。
Q 商品リストについて、具体的にお聞かせいただけますか。
グループとして活動するにあたって、鮮魚、青果、食肉と、幅広い商品が揃う我々の強みを活かすには、物流を統合し、輸出手続きを一括して行える体制を作っていきたい、それを簡便にやるためには、決まった基準で「商品はどういうものがあるか」というのが一覧で見られるものがあった方がいいということになりました。各社の輸出したい商品、あるいは今、扱っている商品をエクセルに打ち込んでいただき、それを商品リストという形にして、一覧で見られる形にしてまとめました。そういった情報を一覧にし整理しておけば、輸出手続きに関しても、いちいち調べないで済みます。レイアウトから一つ一つの項目に至るまで、みんなで議論して決めました。商談先の方にはリンクをお教えして、いつでも確認できるようにしています。外国語での表示も切り替えられるようになっていますので、営業のツールとしての側面でも有用なものになると期待しています。
Q 商品リストに盛り込んだ項目で、工夫されたものはありますか。
賞味期限ですね。出荷した後に「あと何日間食べられます」というところは青果と水産、食肉で異なるので、そこの基準、どういった情報を相手側やバイヤーに対して提示すればいいのか、逆にどういった情報は提示してはいけないのかを我々で精査して、これは必要というものをすべて入れ込んで作りました。
Q 今後、このリストをどのように活用されたいと考えていらっしゃいますか。
予め網羅的な情報が整理されていれば、青果の顧客から水産の話がきてもすぐにお客様が欲しい情報を見せることができます。また、今後はこのデータを元に、「この商品はグループ内でどの会社がやろうか」というところの棲み分けの話ができればいいかなと思っています。国ごとに規制上これは出せる、出せないといったことも、顧客にすぐ提示できるよう整理していきたいです。
Q グループとしての具体的な成果はいかがですか。
輸出に関しての成果はまだありません。ただ、知見は増えました。グループで話し合うことで、ターゲット国の規制だったり、自分の業種以外の情報がわかることがあったり、そういう知識が増えることで、輸出の話をいただくときに「魚はこうですよね、肉はこうですよね、野菜はこうですよね」といったお話ができるようになっているので、そういう知見が増えたというのは我々にとってすごいメリットだったと思っています。
こういった出会いの場を設けてもらったことに感謝して、我々の窓口の一つとして、ここには青果、水産、畜産が全部そろっているよというような形で提供できればいいと思っています。
日本国内から海外に輸出する場合は基本的には船か飛行機になるわけですよね。そこに商品を持っていくための一番、安価な流通というのは、やはり市場流通になると思います。その仲卸が集まって、安価で安定した商品を提供していきたいと思います。
輸出する際のグループとしての契約書のひな型も作成しました。グループの1者が持っていた契約書のひな形をもとに、グループとして輸出する際に、こういうものも盛り込んだほうがいいいという項目を入れ込んで、それを日本語と英語で作りました。
受注に関しては、例えばLINEのグループ等を作って、注文を入れていただき、各事業者が自分の該当商品を用意するというオペレーションも想定しています。
Q 今後に向けた課題などあれば教えてください。
広報の部分ですね。我々がこれから世界に出ていくにあたって、海外でのファンというものをこれからつくっていかなきゃいけない。そのためにSNSなどを通じて我々の活動を周知するとともに、作成したロゴマークの認知を高めてブランディングを進めていきたいです。
Q ここにグループのロゴマークがあります。制作のコンセプトはどのようなものでしょうか。
これは市場の「市」という漢字になっているんです。この要素を一つ一つ分解していきますと、赤、緑、青になっています。赤は食肉で緑は青果物です。青は水産物をイメージして、このチームではこれらが三位一体を成していて市場の市というのを形作っています。つまり我々が市場ですよということです。グループとしてのスローガンとして特徴を表したもので、市場のすべてがここにある。このグループに頼めば青果物、水産物、食肉、全部揃いますという意味で、このロゴマークと合わせて作成しました。
Q 今後、輸出に取り組む業者さんに対して着眼点などアドバイスをいただけますか。
インターネットで調べればわかりますが、輸出には必ず輸出規制というものがあります。輸出規制というのはかなり変わりやすく、台湾みたいに前期と後期で規制が変わってしまうような国もありますので、確認が大切です。ジェトロさんのものはよくまとまっています。ひとつの企業で輸出の課題を突破するのは厳しい状況ですが、グループとしていっしょになることで、どこの国にどんな規制があって、どういうところが難しいという情報交換ができるようになります。
Q 情報収集の大切さですね。他に何かアドバイスがあればお願いします。
海外に出ていく前にまず国内の足場固めをきちんとやりましょうということを、ぜひお伝えしたいと思います。「国内の足場固め」とは何かというと、具体的には商流と物流です。これをどう構築するか、どのようにして空港まで持っていくのか。生鮮であれば飛行機が大半ですが、あるいは船の場合でも、港湾なり、その途中にある物流倉庫まで、様々な物品があって温度帯が違う中で、どうやってそれらを輸送するか。
それと決済ですね。お金の部分は非常に重要で、見積を出すに当たっても、間に輸出の商社が入るとか、あるいは輸出に取り組む事業者の中の一社が代表して輸出と決済をやるのかで、値段もかなり変わってくると思います。まず見積で、海外と相談しなきゃとか、前のめりになる前に、国内の体制を整備した上で外に出ていきましょうと申し上げたい。
我々はそれをちゃんとやっているので、成功はしていないかもしれないけれど、目立った失敗もしていないです。リスクを最初に全部洗い出す。それをやらずに前のめりになって、先方に値段を言ってしまい、商社が入るからそれより高くなってしまった、という事例をたくさん見てきました。そこはぜひ皆さんに理解していただきたいなと思います。最初にリスクの按分を合意しておく必要はありますが、あとは同じテーブルにつけば、話を進めていけるのではないかと思います。