市場のグループで輸出に取り組んだ事例
-
真実の日本産品「True Made in Japan」を大田市場から海外へ
参加企業
主要ターゲット国
Q 参加企業の概要をお聞かせください。
我々は大田市場の青果の3社が集まったグループです。
Q 大田青果グループの方は他のグループでも活躍されていますね。このグループでは青果の商材と情報を生かし、他のグループと情報交換しながら輸出拡大をめざす活動をなさったと聞いておりますが。
メンバーのそれぞれが他のグループに入っていますので、各グループからの情報を共有でき、他のグループの動きもわかります。
Q グループのミッションとしては三つ掲げられていますね。「国際競争力の強化」「国産品の知名度の強化」「本物商品の流通」。そして「偽物の商品を駆逐する」。 特に偽物を駆逐するというマインドは市場全体としてもとても重要かと思います。
例えばシャインマスカットの件です。日本から種や枝を持っていって実際に継ぎ木して栽培している。最初に持っていった人が帰国したらもうクオリティーを保てない商品になり、おいしくないシャインマスカットとして出てしまったようです。ところが、日本のシャインマスカットと比べると単価が安いんです。おいしくないけど、それでも満足して買ってる人がいる。そことどう戦っていったらいいのかという課題が出てきます。でも、シャインマスカットは他のブドウに比べると、下手に作ってもそこそこおいしい物ができる。買われる方は選べるわけですから、そうなると日本から行くボリュームは圧倒的に減るわけです。輸出の醍醐味である日本からのボリュームはなくなってしまっている。例えばタイでは若い層はシャインマスカットは韓国産だと思っています。理由は普及量です。コンビニとかで安く売られてるシャインマスカットしか知らないので、シャインマスカットと言えば「made in Korea」。 だからシャインマスカットは韓国が作った物で日本が真似して高く売っているというのが、現地の20代の認識です。
Q 本物を海外に輸出したいとの戦略として、「True Made in Japan」というのを掲げてこられたのですね。
そうです。われわれは本物の日本産であることの証明、大田市場を通っている証明を出すことにより安心安全をアピールしないといけないと思いました。大田市場を経由して買う方へのプロモーションとしては、まずは国内流通を簡素化できるのでトータルの物流費は安くなることがあり、その次に大田市場の信用性のアピールです。我々が扱う物は本物であり、大田市場が偽物のシャインマスカットを扱うわけがないという安心と信頼による真実の日本産「True Made in Japan」という形にしました。
シャインマスカットと同じような例がイチゴです。丁寧なことに、サンリオのキャラクターのキティちゃんの絵が描いてあって、ひらがなで「あまおう」と書いてあるんです。それで裏を見ると「made in Korea」と書いてあるんです。ひらがなとキティちゃんで日本産だと思って買っちゃいますよね。海外産のシャインマスカットやあまおうなど、そういうのをしょっちゅう見てきたので、悔しいなと思っていました。
大使館の方からも偽物については「これは危ないんじゃないのか」と言われているんです。タイの大使館の方からの情報だと「made in Japan」は、みんな求めているけれども、今は価格競争に陥って低価格の物の流通が多くなってきてる。偽ジャパンの低価格帯が流通してこれでいいじゃないかとなっている。そうすると次第に嗜好品化してしまうんですね。裕福な方が1年に1回ぐらい、高くてもおいしい日本産を食べようかぐらいになってしまうと、流通量が著しく下がってしまい、それが危ないと。もう既に価格帯競争に巻き込まれてしまっているんです。
Q 大田青果グループ3社が共同して、お互いの強みを出し合って、本物を届けるというターゲットを絞りました。その中で偽物を駆逐するという対策にヒントみたいなのはありますか。
それはお客様が決めることですので、食べてもらって選んでもらうしかない。食べてもらっておいしいと知ってもらう、そういう勝負を仕掛けるしかない。いくらこちらが能書きを垂れても、食べてまずかったらアウトですから。
Q 本物があるということを買う方も理解しなければならないということですね。それには本物を扱いたいというバイヤーやパートナー見つけるということでしょうか。
中国の北京と香港、マレーシア、シンガポールで、各青果バイヤーとコミュニケーションを取ったことがありますが、「日本産じゃなくてもいい」と言っているバイヤーさんは一人もいなかったです。ただ、日本産を流通させたいけれど、背に腹は変えられない事情がある。ちゃんとしたパイプのつながった状態で流通ができれば、日本産を売った方が消費者が喜ぶのはわかってると言っていました。安いものが出回ってると、価格が高くてもそっちよりこっちのほうがおいしいよといっても、いっぱいある方に人は流れていってしまうので、それで苦しんでいる。「本当は売りたいんだけどね」という話がありました。ということは、チャンスがあるのに、指をくわえてる状態が今の日本だと思いますので、ここは一つ、やるべきだと思うんですよ。もったいないですよね。
Q グループとして商品力の強さについてお聞きします。皆さんはかなりのボリュームを扱っておられます。付加価値の高い商材をボリュームに加えると、その商材が生きてくるという代表的なものをお聞かせください。
アソートする際に、リンゴはオーガニックもありますが、60何種類取り揃えています。例えばイチゴでも、アソートの場合には宝石箱のように、16種類並べてシールを張ると1種類だけよりもギフトとしては面白いと思います。それができるのが我々の強みだと思っています。例えば先方のバイヤーさんが、じゃあこれはどこにどうやって売ろうかまたはこうやって売ろうとか、そういったことができることがグループのメリットかと思います。
Q 産地から直接出していることの対極にある考え方ですね。情報とソフトをもとに、商品に付加価値をつけた本物の日本産を出すということですね。
サツマイモだったらサツマイモ、どこどこの何とかの紅はるかが何百トンとかということの対極ですよね。それは、よく言われるように市場だからこそ全国からいろいろ集まってきて、それがワンパケで案内でき運べる。そこに私どもも入れてもらうという戦略です。「大田に集まってくるものは純国産でブランド品だ」という、そういったお墨付きがつけられるということですね。
青果仲卸の社長から言われたのですが、その仲卸は日本のいろんな産地から直に買っているんですが、その担当者が情報のやり取りで1日中机から離れられなくなっているんです。これが1社とのやりとりで済むようになればとても助かる。スーパーマーケットだって来た物をすぐ売るんではなく、企画販売があって「じゃあ来月はこのレイアウトでいきましょう」というのは、海外でもいっしょなんです。たとえ柿がなくなっても、代わりに我々だったらリンゴが提案できますよとか、この間にナシが提案できますという提案ができるんです。それは向こうの青果のバイヤーさんも求めているんですね。これが今、日本ができずに情報が単独になっている。だから、値段、価格競争になってしまうんです。
Q 大田の青果の情報を持って他のグループでも活動されました。その中で輸出に取り組んだプラス要因をお聞かせください。
いろんな方々との、新たな結び付きから、じゃあこういったものを日本に持ってきたいんだけどとか、そういった話も聞くようになりました。取り組むことによって広いつながりができたというのがプラス要因です。
また、大田グループだと、物流の考え方とか、決済の考え方、結構シンプルに考えていましたが、他のグループでは、結構、進んだ考えを持っていました。特に与信管理で他のグループが心配されていることを、うちはそんなに考えていなかった部分がありました。真剣に取り組まなきゃいけないんじゃないかと考えましたがそれが情報ですね。恐らく単独で動いていたらああいう情報は手に入らないと思います。与信管理や、極力、安全性を高めるような取引の契約書の作り方だったりとか、そういったことは勉強させてもらったので、そこはメリットになってきますね。
Q 輸出に取り組むみなさんへ何かアドバイスがあればお願いします。
産地偽造は絶対にやめてもらいたいですね。今後の取引のダメージが深刻ですから。大田市場の仲卸の信頼を高い水準で維持したいです。
Q 本物を売っていこうよということに全部つながっていくんですね。
そうなんです。我々がやろうとしてる、大田市場は必ず安全安心だっていうブランドが、傷がついてしまいやりづらくなるから。大田市場の信頼を損なうような行為は、自分だけの責任ではなく連帯責任みたいになってしまうといけないので、それが不安ですね。だから取り組む方は本当に気を付けてほしいですね。