市場のグループで輸出に取り組んだ事例

グループ名:The Gateway to Japan Premium Products of Farm and Marine

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「Japan premium」を輸出したいという強い思いでドバイで商談会を開催

参加企業
カネブン青果株式会社(青果)、第一水産株式会社(水産)

主要ターゲット国
UAE、シンガポール、タイ、オーストラリア

Q  グループ名と参加企業の概要をお聞かせください。

 大田と豊洲の青果の仲卸と、豊洲の卸の3社からなるグループで、英文のグループ名を「The Gateway to Japan Premium Products of Farm & Marine」としました。ターゲットをUAEのドバイに絞り、活動をしてまいりました。

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Q 活動の主な内容についてご説明ください。

 我々がめざしたのは、既存の手法ではなく新たなチャレンジをしてみたいということでした。日本の四季なり、その旬というものをきちんと情報として伝えたいといったことや、我々がこれを売りたい、こういったものを買っていただきたいといったことなど、主体性を持って輸出というものをやってみたいと思ってのことです。その思いを結実させる形で、 2023年1月にドバイで商談会を開催しました。

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Q ターゲット国をドバイに絞った決定的なビジョンはありましたか。

 なぜドバイなのかというのは「Japan premium」だからです。私たちはもっと日本には良いものがあり、これが日本のうまいものだという形で輸出したいという思いが強くあります。ただし、そうすると価格は高いものになります。おいしいけども高い。だからこそ自分たちの口で説明したいという思いが強くありました。そして、ドバイには世界の国からレジャーやビジネスで来る方々がいっぱいいます。シェフとかオーナーも欧州、アメリカから訪問している。我々の商品がドバイで認められれば、彼らの人脈を通じて世界に浸透していけるポテンシャルがあると判断して最終的にドバイを選択しました。

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Q  商談会には約70店舗が参加されたとのことですが。

 主に日本食、和食を中心とした日本料理屋さんにお声掛けをし、それ以外は中華、イタリアン、あとは変わったところでは青果関連でスイーツ店、大きな企業では某有名ホテルチェーンの中にある店舗のヘッドシェフもお越しになりました。いわゆる日本人をお客様層とするお店の方と現地のドバイのアッパー層の人たちという2種類のタイプを招待し、SNSや現地の新聞みたいなメディア関連にも載りました。

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Q 会場は現地の有名ホテルを2ホール借り切って使用したということですが、演出とレイアウトの在り方についてご説明ください。

 出発前にいろいろ考えたのは「和をどう見せようか」と思い、「かっこいい演出したい、日本を象徴する演出をしたい」ということでした。二つのバンケットルームで片方は完全に演出として使用して、もう一つは試食と商談の会場ということで完全に分けました。中に入ると正面に大きなスクリーンがあり、東京都中央卸売市場の水産の映像と音楽を流し、とても良い状態に仕上げました。その横には野だて傘、あと和傘を並べました。そこでまず東京都の映像を見てもらって、見終わったらまたそこから試食の会場に移るという流れを作りました。
 私たちのやりたかった演出は、今までドバイでやってきた食のイベントのような、やる人が変わるだけで、どこにでもあるような形式ではないものにしたいと考えました。我々はプレミアムが持ち味ですから、単に会場に入ると魚と野菜、果物があって、そこで食べて、はい、さよならという形態はやりたくないと思っており、来ていただいた方々に日本を愛していただき、日本を好きになっていただこうという発想でいました。

 

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Q 素晴らしいですね。参加されたお客さまは演出について、非常に感動して帰っていただいたということでしょうか。

 演出は今回二つありました。ひとつは映像による視覚的な演出と、もうひとつは松乃鮨さんの食、味覚の演出です。両演出とも大変成功したと考えております。本当にいい演出ができて、視覚って大事だなとすごく思いました。演出として暗い中で映像を見る、映画といっしょで映画館に行って暗い中で集中して映画を見るのと自宅のテレビで見るのとの違い、簡単に言えば、そういうとこだと思いますが、ここまで演出で変わるもんなんだということを実感しました。

 

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Q 展示会や合同商談会の場合はブースの1小間か2小間という限られたスペースの中で、パンフレットを配り、試食品を提供しての提案スタイルが多いと思います。今回は演出にこだわり、ホテルのバンケットで手作りの商談会を行ったということですね。

 ただ、時間がなかったですね。商品の搬入が商談会前日の昼過ぎに入ってくる予定のものが結局、着いたのが当日の朝4時。ほぼ寝ずの状態で準備にかかり、展示会を迎えたということです。仮に今後他の皆さんが実施される場合は、海外なので日本では起きないことが起きることを想定したほうが良いと思いました。
 例えば今回の荷物でもそうですが、書類が一つない、たまたまパッキングリストにあったものが一つの箱に入っており、それがインボイス等のパッキングリストと違う。パッキングリストが違うという理由だけで通関を止められた。日本であれば開封してリストと合っていれば通してくれるんですが、ドバイでは通してくれなかった。この交渉中に通関の方が交替されて、また一からやり直さなきゃいけないということも起こりまして、非常に時間がかかりました。

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Q ドバイの皆さんの関心が高いと感じられた商品にはどんなものがありましたか。

 ドバイ市内には和食屋さんが多いのですが、特に「握り鮨」が人気のようで、豊洲市場から持って行った 、MSC認証マグロ、ウニ、ホタテ(柱)、寿司海苔は、大変評判でした。
 皆さんの関心は、握り鮨で提供した魚の鮮度や味で、臭みがないこと、味がしっかりしていることに驚いていました。また生魚を食べない人もいましたが、ボイルしたエビを握り鮨で出したら、喜んで食べたりしてくれました。
 日本の衛生基準やMSC認証マグロの話にも耳を傾けてくれました。豊洲市場では、温度だけでなく、箱を丁寧に扱うなど鮮度管理に最新の注意を払っていると説明しました。
 よくされた質問は、「日本から魚はどうやって持ってくるんだ」「値段はいくらなんだ」といったものでした。現地の市場で調達している人は少なく、日本から持ち込まれた食材は、業者に仲介され、現地なりのルートやルールで取引されているようでした。少々時間不足で詳しいことは聞けない面もありましたが、商機は十分にあるという手ごたえは感じました。

 

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Q 商談の中で先方の業者さんからの質問とか商談のエピソードをお聞かせください。

 フルーツについては、私たちが自信を持って提供したものは大変評価していただきました。甘いというのはわかりやすいですよね。特にドバイではお酒飲まない方が多いので、これでもかっていうほど甘いのを皆さん召し上がっていました。クラウンメロンも富士、山、白、雪であると、白が大体、輸出されているのですが、私どもは一番いいランクですね。富士なんていうのはほとんど毎日入ってこないので、一番いいランクのもの、いつもよりもワンランク上のものを出したら「すごくおいしいメロンだ」ということをわかってもらえます。イチゴについてもそうですね。
 それに対して野菜はまったくダメだというのもわかりました。マルシェとかスーパーマーケットとかつれて行ってもらって勉強させてもらってわかったのですが、いろんな国から商品は入っています。近隣の国からも入って、中国からも入って、アメリカからも入っている。そんな中で生鮮の葉物レタスとか含めて、レタスなんかはすごく新鮮なのが毎日出てくるわけですよね。「どこから来るんだろう」と思ったら、工場があちこちに建っていて、そこで作っているわけです。葉物は新鮮なドバイ産がいっぱいある。でもそれ食べてもおいしくないんですよ。野菜の味がしない。日本人が作る水耕レタスだったら、そこにおいしいという溶液を入れておいしくさせるのですが、そんなものは望んでなく、野菜なんて食べられればいい。だからこれは一生懸命、僕たちがおいしいものを持っていっても難しいなと思いました。
 あとは見た目の形ですね。ドバイにも和食屋さんがあるので、日本の和食が成り立つもの、お鮨として成り立つもの、ワサビであり大葉であり花穂であり、こういったものはきちんと日本からいっぱい輸出されている。それは絶対必要なものなんですね。加えて香り高い食用のバラのスパークリングも狙い通り好評でした。ただそれ以外の野菜というのはこれから向こうから望まれない限りはあまり苦労して輸出する必要ないなと思いました。

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Q 今回の取り組みを通して、どのような感想をお持ちですか。

 正直言って補助金をいただいたとはいえ、何百万という持ち出しがあるわけで、それが1円も回収できてないっていうのが現状です。
 ただ我々もそんな甘いものではないというのは覚悟して行きましたから、せめて「日本って面白いな」という結果だけでもいいと言っていたのは本音ですね。時間がかかってもしょうがないと思っています。まったく新しいチャレンジで、新しい所でやろうと組んだメンバーなので、まず針の穴は開いた、あとはそこにものが通る割り箸の穴ぐらいまでにして、ビジネスの穴にしていきたい。そこに力を貸していただきたいっていう思いです。だから今は全然後悔はしてないし、いい方々とパートナーになれたと思っています。
 一つの商品を展示会に出して、それを世の中に広めるって5年かかります。例えばギフト・ショーですが、毎年出し続けて5年で大体、ルートに乗る感じなので、1年目って正直、まったく成果としては出なくても仕方がないという心意気でやっているほうがいいかなと思いました。

Q 今回異業種、大田と豊洲というコンビネーションの中でグループとして取り組んだ点についてご感想をお聞かせください。

 果物や野菜はマグロに比べると、伝票に記載されたとき、もしかして二つ三つゼロが少ないんです。だから高価な魚介類とお肉といっしょにやっていくと、われわれが活躍できるフィールドっていうのは広がっていくという意味でとても大きな利点です。
 いっしょに営業していろんなジャンルがいっしょになるというのは利点だと思っています。
 市場で働いている人たちは日本で一番おいしいものを食べている可能性が高いです。お客さんの求めるものとして、味と値段のバランスってあると思います。
 そこの目線合わせさえしっかりできれば商品の供給は必ずできると思っています。だから私は長い目で見て、どこかでチャンスが出てくると思います。

Q これから輸出に取り組もうという業者さんに対する何か着眼点とかアドバイスとかございましたらお願いします。

 輸出というのは非常にハードルが高いです。正直、簡単には道はつくれません。本当に利益ゼロでも道ができれば最初は十分です。それを2年、3年、5年ぐらいですかね、道がどんどん大きくなればいいなっていうか。チャレンジするというのは会社が残るために必要なことだと思っております。国内市場、相当、先は厳しいです。人口も減りますし、食べられる量も少なくなってきます。そのとき海外市場はまだ大きくなりますので、少しでも余裕がある方は、1回は取り組んだほうがいいと思います。

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