築地市場物流動態調査 調査結果報告書 Ⅳ.水産物部仲卸業者の物流経費
本調査は10月26日(金)に販売された水産物を対象に以下の方法により実施した。
- 水産物仲卸会社に実施したアンケートの有効回答288社による集計
- アンケートの項目は以下のとおり
(1)仕入金額および仕入先の割合
(2)商品区分別取扱割合(金額比)
(3)販売先別取扱割合(金額比)
(4)卸売場から仲卸店舗への引取方法(仕入金額による割合)
(5)販売物品の場内配達先(金額比)
(6)在庫の保管状況(重量)
(7)配達に関る人件費、車両保有状況、その他経費
(8)配送員による引取、配送回数
1.平均的仲卸業者
10月26日(金)に実施したアンケートの有効回答288通を基に1社当たり数値を算出し、仲卸業者の平均像として分析した。
(1)仕入金額と仕入先
仕入先別金額 単位:円
金額/店 | 構成比 | |
---|---|---|
卸売業者 | 1,338,057 | 89.4% |
仲卸 | 99,909 | 6.1% |
場外 | 68,478 | 4.6% |
合計 | 1,497,444 | 100.0% |
仕入商品別金額 単位:円
金額/店 | 構成比 | |
---|---|---|
大物 | 345,597 | 23.0% |
遠海 | 152,275 | 10.1% |
近海 | 190,412 | 12.7% |
特殊 | 326,665 | 24.1% |
海老 | 56,179 | 3.7% |
蛸 | 13,675 | 0.9% |
遠洋 | 82,386 | 5.5% |
北洋 | 118,894 | 7.9% |
合物 | 57,660 | 3.8% |
燻製 | 64,612 | 4.3% |
佃煮 | 60,323 | 4.0% |
合計 | 1,504,678 | 100.0% |
- 仲卸業者の1日当たり入金額は概ね150万円。うち90%程度を卸売業者から仕入れている。
- 残りの10%を同業者からの仕入れと場外からの搬入によっている。
- 商品別には特種と大物が20%を超えている。
(2)販売先
販売先別金額 単位:円
金額/店 | 構成比 | |
---|---|---|
一般小売店 | 281,612 | 18.6% |
専門量販店 | 126,310 | 8.4% |
大手スーパー | 29,771 | 2.0% |
中小スーパー | 281,038 | 18.6% |
料飲チェーン店 | 220,054 | 14.6% |
その他料飲店 | 452,848 | 30.0% |
その他 | 119,265 | 7.9% |
合計 | 1,510,899 | 100.0% |
- 販売先は一般小売店、量販店、スーパー等へ50%弱(47.6%)、料飲店へ約45%(44.6%)とほぼ小売店と料飲店が半々となっている。
(3)卸売場から仲卸への引取方法
卸売場から仲卸店舗への引取方法(金額ベース)単位:円
金額/店 | 構成比 | ||
---|---|---|---|
卸が配送 | 472,198 | 35.4% | |
自社引取り | 仲卸 | 794,386 | 59.5% |
その他 | 68,501 | 5.1% | |
合計 | 1,335,084 | 100.0% |
- 自社による引取と卸業者(小揚)による配送は概ね65:35と自社引取が多い
(4)販売物品の場内配達先
販売物品の場内配達先 単位:円
金額/店 | 構成比 | |
---|---|---|
店頭 | 150,439 | 10.0% |
買荷 | 458,509 | 30.5% |
共同 | 192,890 | 12.8% |
スーパー | 267,451 | 17.8% |
一般 | 103,395 | 6.9% |
運送 | 132,297 | 8.8% |
自社 | 155,183 | 10.3% |
その他 | 43,961 | 2.9% |
合計 | 1,504,125 | 100.0% |
- 店頭渡しは10%にすぎない。
- 買荷保管所への配送が30%程度(30.5%)と最も多い
- スーパーや一般買出し人の車への配送が25%程度(24.7%)
- 共同配送や運送会社への配送が20%程度(21.6%)
- 自社配送は10%程度(10.3%)となっている
(5)在庫の保管状況
在庫の保管状況(重量)単位:Kg
在庫/店 | 構成比 | |
---|---|---|
場内冷蔵庫 | 3,679 | 62.0% |
場外冷蔵庫 | 1,839 | 31.0% |
店舗内 | 413 | 7.0% |
合計 | 5,931 | 100.0% |
- 場内冷蔵庫62%、場外冷蔵庫31%、自社冷蔵庫7%と場内冷蔵庫の利用が場外冷蔵庫の2倍となっている。自社冷蔵庫は店舗の狭隘さもあり10%以下にすぎない。
(6)配達に関る人件費
配達に要した人件費 単位:円
@人件費 | 人数/店 | 人件費/店 | |
---|---|---|---|
従業員等 | 319,898 | 2.2 | 704,337 |
アルバイト | 230,592 | 0.5 | 110,989 |
合計 | 303,877 | 2.7 | 815,326 |
- 1店舗につき社員およびアルバイトをそれぞれ2.2名、0.5名、計2.7名雇用している。
- 平均給与はそれぞれ32万円/月、23万円/月となっている。
- 従って支払い給与額は815千円/月となっている。
(7)車両保有台数と経費
車両に関る経費は、標準的な購入価格を5年使用すると仮定し、60ヶ月で按分し1ヶ月の車両経費を算出した。
車両保有台数とコスト 単位:台数、千円
台数/店 | 経費/店/月 | |
---|---|---|
ターレ | 0.9 | 12,088 |
小車 | 1.4 | 11,900 |
軽トラ | 0.4 | 5,344 |
普通 | 0.5 | 11,673 |
ワゴン | 0.7 | 23,476 |
合計 | 3.9 | 64,481 |
その他配送、駐車場経費 単位:円
金額/店 | |
---|---|
共同 | 34,827 |
宅配 | 131,176 |
駐車場(配送) | 25,151 |
駐車場(顧客) | 736 |
その他 | 34,018 |
合計 | 225,909 |
- 配送用車両として各種車両を平均して1社あたり3.9台保有している。
- このコストを5年使用で毎月定額に按分すると1社当たり64,481円/月となる。
- その他駐車場等の経費として1社あたり226千円/月負担している。
(8)配送に関る経費の推定
配送経費に係る指標
配送経費計/日 | 配送引取回数 | 自社引取仕入額 | 仕入総額 | 仕入配送経費率 |
---|---|---|---|---|
46,071 | 30.5 | 862,886 | 1,497,444 | 3.1% |
- 上記配送に関る人件費、車両費、駐車場等の経費を合計すると1社につき1日あたり46千円となる。
- 平均46千円に仲卸業者数923を掛けると仲卸計としての配送コストは1日あたり4200万円となる。
- ただし給与額等から類推すると給与に配送業務以外の業務についての支給見合いも含まれていると思われる。
- また1日の仕入額に対する配送コストの比率は3.1%となる。
- 売上総利益率を15%と仮定すれば平均売上額は1762千円となり配送費の売上高に対する比率は2.6%となる。
2.仲卸業者取扱額トップ10と平均像の比較
ここではアンケート有効回答288社のうち仕入金額が大きい上位10社の平均値と288社の平均値を比較し規模の大小が配送コストに与える影響を分析する。
(1)仕入金額と仕入先
トップ10仕入先別金額
金額/店 | トップ10/平均 | 構成比 | |
---|---|---|---|
卸売業者 | 13,292,880 | 9.93 | 87.8% |
仲卸 | 1,026,635 | 11.29 | 6.8% |
場外 | 819,885 | 11.97 | 5.4% |
合計 | 15,139,401 | 10.11 | 100.0% |
トップ10仕入商品別金額
金額/店 | トップ10/平均 | 構成比 | |
---|---|---|---|
大物 | 2,943,943 | 8.52 | 19.4% |
遠海 | 2,033,172 | 13.35 | 13.4% |
近海 | 1,466,389 | 7.70 | 9.7% |
特殊 | 3,698,190 | 10.20 | 24.4% |
海老 | 377,221 | 6.71 | 2.5% |
蛸 | 48,044 | 3.51 | 0.3% |
遠洋 | 1,319,828 | 16.02 | 8.7% |
北洋 | 1,976,222 | 16.62 | 13.1% |
合物 | 465,005 | 8.06 | 3.1% |
燻製 | 594,554 | 9.20 | 3.9% |
佃煮 | 216,834 | 3.59 | 1.4% |
合計 | 15,139,401 | 10.06 | 100.0% |
- 仕入金額は15百万円と平均のほぼ10倍となっている。
- 仕入先の構成比は平均とほぼ同様で卸売業者から90%程度を仕入れている。
- 仕入商品についてもトップ10は北洋がやや多く佃煮・蛸が少ないことはあるが規模の違いによる大きな相違点は認められない。
(2)販売先
トップ10販売先別金額
金額/店 | トップ10/平均 | 構成比 | |
---|---|---|---|
一般小売店 | 1,672,261 | 5.94 | 11.0% |
専門量販店 | 1,990,005 | 15.75 | 13.1% |
大手スーパー | 250,046 | 8.40 | 1.7% |
中小スーパー | 3,391,793 | 12.07 | 22.4% |
料飲チェーン店 | 2,662,614 | 12.10 | 17.6% |
その他料飲店 | 4,398,626 | 9.71 | 29.1% |
その他 | 774,055 | 6.49 | 5.1% |
合計 | 15,039,401 | 10.02 | 100.0% |
- 販売先についても小売店向けと料飲店向けの比率は48.2:46.7と平均の47.6:44.6とほぼ同じである。
- 一般小売店が少なく専門量販店が多いことは、大口取引が多いことの反映と思われる。
(3)卸売場から仲卸への引取り方法
トップ10卸売場から仲卸店舗への引取方法(金額ベース) 単位:円
金額/店 | トップ10/平均 | 構成比 | ||
---|---|---|---|---|
卸が配送 | 5,260,725 | 11.14 | 39.6% | |
自社引取り | 仲卸 | 7,269,789 | 9.19 | 54.9% |
その他 | 735,367 | 10.74 | 5.5% | |
合計 | 13,292,880 | 9.96 | 100.0% |
- 卸業者による配送が39.6%と平均より5%程度大きいが際立った相違はない。
(4)販売物品の場内配達先
トップ10販売物品の場内配達先 単位:円
金額/店 | トップ10/平均 | 構成比 | |
---|---|---|---|
店頭 | 347,277 | 2.31 | 2.3% |
買荷 | 2,594,378 | 5.66 | 17.1% |
共同 | 4,134,226 | 21.43 | 27.3% |
スーパー | 3,540,672 | 13.24 | 23.4% |
一般 | 643,015 | 6.22 | 4.2% |
運送 | 1,798,510 | 13.59 | 11.9% |
自社 | 1,255,239 | 8.09 | 8.3% |
その他 | 826,084 | 18.79 | 5.5% |
合計 | 15,139,401 | 10.07 | 100.0% |
- 店頭渡しが2.3%と平均の4分の1程度と少ない。これは販売先が平均に比べ大口が多いことによると思われる。
- 同様に買荷保管所へも平均の半分程度に留まる。
- 共同配送への配達が27.3%とトップ10が平均より約15%(14.5%)多い。
- スーパーには23.4%とトップ10が平均より5.6%多い。
(5)在庫の保管状況
トップ10在庫の保管状況(重量)単位:Kg
在庫/店 | トップ10/平均 | 構成比 | |
---|---|---|---|
場内冷蔵庫 | 63,623 | 17.29 | 79.4% |
場外冷蔵庫 | 13,940 | 7.58 | 17.4% |
店舗内 | 2,565 | 6.21 | 3.2% |
合計 | 80,128 | 13.51 | 100.0% |
- 場内冷蔵庫:場外冷蔵庫:自社冷蔵庫が平均は62:31:7に対しトップ10は79.4:17.4:3.2と場内冷蔵庫の利用が17ポイント弱多く、場外冷蔵庫と自社冷蔵庫の比率が少ない。
- 今後の市場において仲卸店舗の広さと場内冷蔵庫利用の関係は効率を考え適切に設定する必要があると思われる。
(6)配達に関る人件費
トップ10配達に要した人件費 単位:円、人
台数/店 | トップ10/平均 | 人数/平均 | 人件費/平均 | トップ10/平均 | |
---|---|---|---|---|---|
従業員 | 420,274 | 1.31 | 6.0 | 2,521,642 | 3.58 |
アルバイト | 299,940 | 1.30 | 2.6 | 779,843 | 7.03 |
合計 | 383,894 | 1.26 | 8.6 | 3,3,01,485 | 4.05 |
- 1人あたりの給与額は平均と比べ30%高い。
- 人数は1社あたり9人と平均の3.2倍雇用している。
- 人件費はトップ10の仕入額が全社平均の10倍にも関らず、平均のほぼ4倍に留まっている。
(7)車両保有台数と経費
トップ10車両保有台数とコスト 単位:台数、千円
台数/店 | トップ10/平均 | 経費/店/月 | トップ10/平均 | |
---|---|---|---|---|
ターレ | 4.6 | 5.07 | 61,333 | 5.07 |
小車 | 1.7 | 1.19 | 4,250 | 0.36 |
軽トラ | 1.3 | 3.24 | 17,333 | 3.24 |
普通 | 2.7 | 5.78 | 67,500 | 5.78 |
ワゴン | 2.2 | 3.12 | 73.333 | 3.12 |
合計 | 12.5 | 3.20 | 223,750 | 3.47 |
トップ10その他配送、駐車場経費 単位:円
金額/店 | トップ10/平均 | |
---|---|---|
共同 | 248,921 | 7.15 |
宅配 | 1,681,862 | 12.82 |
駐車場(配送) | 134,000 | 5.33 |
駐車場(顧客) | 5,000 | 6.79 |
その他 | 196,804 | 5.79 |
合計 | 2,266,587 | 10.03 |
- トップ10保有台数は12.5台と平均の3.2倍。
- 経費は同様に概ね3.5倍となっている。
- その他駐車場等の経費は仕入額に比例し10倍。
(8)配送に関る経費の推定
トップ10配送経費に係る指標 単位:円、回、%
配送経費計/日 | 241,326 |
---|---|
配送引取回数 | 102.5 |
自社引取仕入額 | 8,032,155 |
仕入総額 | 15,139,401 |
仕入配送経費額 | 1.6% |
- 人件費、車両経費、駐車場等の経費を合計すると平均の5.24倍となる。
- 自社による配送回数は平均の3.36倍であり、仕入額が10倍であることを考慮すると、配送1回あたりの量が大きく、効率的に配送されていると推定できる。
- また仕入額に対する配送経費率は平均の3.1%に対し1.6%とほぼ半分に留まっている。
- 売上総利益に対する配送経費率は平均の2.6%に対し1.4%となる。
- トップ10平均では人件費が平均より高いものの配送1回あたりの量が多く、相対的に経営のコストとしては軽く、より効率的に運営されている。
平均的仲卸とトップ10主要数値比較 単位:円、%、倍率
平均 | トップ10 | トップ10/平均 | |
---|---|---|---|
仕入額 | 1,497,444 | 15,139,401 | 10.11 |
配送経費 | 46,071 | 241,326 | 5.24 |
配送回数 | 31 | 103 | 3.36 |
仕入配送経費率 | 3.1% | 1.6% | 0.52 |